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Mi chiamo June

Che ne dici? 〜 膝小僧と絆創膏

女性が膝小僧に絆創膏を貼れる年齢の上限は一体いくつまでだろう。

そぅ問われた時、皆さんはなんて答えるのか。

「そんなの怪我してるんだから年齢なんて関係ない」と思う人もいるだろう。

では、質問を変えてみる。

女性が膝小僧に絆創膏を貼って、
「まぁ、おてんばさん。」
「カワイらしい。」
と思える年齢はいくつまでだろう。

私の上限は20代前半までだ。
後半あたりから、貼っても良いけど隠しなさいよ。と思ってしまう。

昨日、友達と食事に出かけた。
ビール2杯に、日本酒を一杯と芋焼酎を一杯。
私の心の友たちは、私がこの程度の酒量では酔わないことを良く分かっていると思う。
しかも店を変えている為、立て続けに飲んだ訳ではないし、合間に水も飲んでいた。

そんな私が、そろそろ店を移ろうかと、
会計を済まし、店の扉を開けた瞬間、崩れるように倒れたのだ。

しつこいようだが、足取りはしっかりとし、酔ってはいなかった。

では何故。

一緒に食事をしていた友達に、今更、
「私、酔ったみたい」等と可愛さをアピールする気など更々ない上に、友もドン引きするだろう。

では、何故。

段差だ。
店と、店の外には、階段一段分の段差があった。
入る時は上りの為、全く存在にすら気づかなかった。
店を出ようと、ドアに手を掛けた私の頭の中は次に行こうとしていた寿司屋の事で埋め尽くされていた。
要は浮かれていたのだ。

海老!
声には出さなかったが、そぅ思い、店の外に一歩足を踏み出した瞬間、私の左足首はバッチリと角度を変え、そこだけ中国雑技団の入団を許されそうな勢いだった。

痛い!

グキだか、グニだか。
よく分からない音が私の耳に届いた。
実際にはそんな音、鳴っていないのかもしれないが、私の体内には流れていた。

身体のバランスを一気に崩し、コケた。

痛い‼︎

雑技団な左足首だけではない、
右足の膝はダイハードのジョン・マクレーンかと思うほどだった。

膝を見た瞬間、気分が悪くなった。

昔から生傷が苦手で、人の傷はもちろん、自分の傷でさえ、見た瞬間血の気が引く。

アレ、おかしい。
友達の顔にモザイクがかかっている。
確かにジャニー喜多川が
「Youウチの事務所入りなよ。」
と言うほどのイケメンではないが、
モザイクをかけるほどのメンでもない(友よ許せ)。
なのに何故。

見れば店の看板にもモザイクがかかっていた。
紛れもなく貧血だ。

お店の人から氷をもらい、落ち着くまで店先で休ませてもらった。
その間、何人かの人が店を後にし、私の横を通り過ぎて行った。
誰一人として、店を出た瞬間にコケている人などいなかった。

まぁ、可哀想に。
酔って気分が悪くなったのね。
彼氏に介抱されて微笑ましい。

そんな所だろうか。

しかし、言わせてもらえば、
私は酔ってはいなかったし(しつこい)、
介抱してくれたモザイクとは恋愛関係にない。

店の人も2回ほど様子を見に来てくれたが、
98パーセントの確率で私の事を酔っ払いの女だと思っていたに違いない。

2回目の巡回で、店員さんから再び、大丈夫かと声を掛けられた私は、こぅ答えた。
血が苦手で見たら気分が悪くなったと。

店員さんは手に絆創膏をもって出てきてくれた。
その頃には私の貧血も回復しており、絆創膏をありがたく頂戴し膝に貼った。

黒いミニスカートのワンピース。
大人の女らしい小ぶりなバッグ。
くせ毛の髪はまるでパーマをかけたようにウェーブを描いていた。
今から遡る事、数時間前。
意気揚々と外出した私の膝には絆創膏が貼られていた。
タトゥーではない。
膝の小僧に絆創膏だ。
自分が決めた許容範囲の年齢はとうに過ぎていた。

唯一の救いはスニーカーを履いていたこと。
いやー、テニス帰りの打ち上げなんですけど、今日プレイの最中にバランス崩しちゃって。

誰に対しての言い訳なのか。
寿司屋の話は当たり前のように流れ、私は傷を負った兵士のように足を引きずり家路についていた。

バス停に向かう間、私の横にいたモザイクは、こんな事を言っていた。

「いや〜、コケた瞬間の顔は凄かったわ。
段々血の気が引いて真っ青になってさ、下腹部を何か鋭利なもので刺されたか、銃で撃たれた人みたいだっよ。
さすが演技派。ハハハハハッ。」

ハハハじゃねーよ…。

バスの窓に映る私。
絆創膏、貼ってもいいけど隠しなさいよ。
何かの標語のようにあの言葉が脳裏をよぎった。
バスの窓に映る私。
自分で、自分を抱きしめたかった。

暗い家に着き、ヒリヒリする膝を消毒した。
私の浅はかな想像を遥かに超えるほど消毒液は膝にしみた。
目を白黒させ、悶絶した。
そこに、穴か、チップスターか、プリングルスの空き筒があったなら大声で叫んでいただろう。

王様の耳はロバの耳。と。

一夜明け、捻挫の足首と、擦り傷の膝を抱え職場に向かった。
何故なら私は大人だから。
傷にズボンが擦れて、痛くても、涼しい顔をして仕事をした。
何故なら私は大人だから。

だが、大人の私も一つだけ言いたい事がある。
今日、お風呂に入るのがとてつもなく怖い。






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by june05martin | 2015-07-20 22:32 | いつもの時間